周囲の方へ

ご家族の体験談

家族は、摂食障害で悩む方を、どのような気持ちでどのように支えているのでしょうか。例を見てみましょう。

<神経性過食症の娘を支える母親の体験>

私は娘に突然、「自分は摂食障害だ」と告白されました。驚き、どうしたらいいのかわからず、本やインターネットで<摂食障害>について調べました。そこには<心の病気><親の育て方が悪い>とありました。「一生懸命に娘のことを思って育ててきたのに、何が悪かったのか」と苦しみ、自分をとても責めました。
ある時、私自身の生き方が窮屈になっていたことに気付きました。何事もこうあるべきと決めつけて、娘にも同じようにさせていたのではないかと思いました。そう気づいてからは、「なんとかなる、きちんとできなくてもいい、娘が生きてそこにいて、幸せであるということだけでいい」という風に思うようになりました。
過食に苦しむ娘を支える中で、私自身が生きることすら諦めたいと感じたこともありました。そのような時、「それでも何とかなる、きっと幸せになれる」と信じ、願い、娘に寄り添いながら楽しいと思えることを意識的にしていくようにしました。そして、治療が進む中で次第に娘も私に心を開くようになり、一緒にいろいろなところへ出かけたり、外食を二人で楽しんだりすることができるようになるなど、少しずつ変化してきたと思います。
病気は絶対に治ると思います。あきらめず、摂食障害に苦しむご本人を信じてあげてください。

<神経性やせ症の妻を支える夫の体験>

家内が摂食障害です。知り合った当初はそこまでやせていなかったのですが、徐々にやせ始めました。はじめの頃は『体の調子が悪いのかなぁ』くらいにしか思っていなかったように思います。
段々とご飯も一人で食べるようになりました。また、食後は毎回トイレに行くようになりました。便器の汚れが気になった時、彼女に「トイレが汚れているけど何?」と尋ねたことがありましたが、彼女は答えませんでした。振り返って考えてみたら、吐いていたことを知られまいと黙ったのだろうと思います。それから、彼女が作ってくれる食事の量も変でした。通常よりも多い量の揚げ物や白米などを私に食べさせるのです。断ったり控えたりすると「何で食べないの?」と言われ、夫婦の関係がぎくしゃくするので仕方なく食べていました。私の体重が20kg増え、健康診断で指摘されたことで、私に食べさせる行動はおさまりました。その後は私の代わりに、親やペットに食べさせていました。そんな様子を見て『大人なのにわがままだなぁ』と思うこともありましたし、仕事のストレスもあって、彼女を避けたくなる時期もありました。一緒に住んでいても、“ただの同居人”というような感覚になっていきました。辛かったですね。
結局、彼女の体力はどんどんなくなっていき、ほぼ家で寝たきりの状態になりました。その後、自宅で倒れ、初めて病院にかかり、合計3回病院に入院させてもらいました。元々病院嫌いでなかなか医療機関にもかかろうとしなかった為、家族としては入院させてもらえて正直ほっとしたところはありました。でも、入院で初めて経鼻栄養を受ける本人を見るのは、やはりしんどかったです。もちろん本人も辛かったでしょうけどね。
ネットや本に載っている摂食障害に関する説明は、家内の行動や症状と合わない部分もあり、私は病院で開催されている家族教室に出て勉強させてもらいました。摂食障害の患者さんを抱える家族と一緒に病気の事を勉強できたのは、良かったなぁと思います。家族教室で「症状と本人を分けて考える」という考え方を知ったことで、彼女に対してイライラせずに一歩引いて見ることができるようになりました。それまでは寝ている彼女に対して「ゴロゴロするな!」などと、思ったことを結構ストレートに言っていましたが、『疲れているのだな、調子が悪いのだな』と一旦心の中で思ってから、「調子悪いの?」と声を掛けるようになりました。また、症状が弱く、健康な部分が強そうなときには「今日は調子良さそうだね」と声を掛けることもありました。そういった関わりを続けていく中で、次第に彼女の方からも、「吐いてしまった」「体重測定に向けて水を飲みすぎて苦しい」など、症状に関する話題も出してくるようになりました。まだ、探り探りですけれど、段々とこちらも調子のいい時、悪い時が分かるように、感じられるようになってきたように思います。
家族だからこそ、甘くしすぎてしまったり、厳しくしすぎてしまったりすることはあると思うのです。回復傾向にある今でも毎日不安にはなりますし、「食べられない」と言う彼女を見ると、『また前みたいに戻るんじゃないか』と気になる事はあります。でも、一方では『私にはどうしようもないこと。何かあればまた病院にかかったらいい』と安心している部分もあります。病院にできること、家族にできること、それぞれあると思うのです。家族は『いつも見ているよ』というメッセージを本人に発信することができます。家族が食事や体重のことを勘ぐってしまえば、関係は悪くなるので、そういうことは病院に任せて、本人の発言を信じるしかないと思っています。私は彼女の様子を見守りながら、ちょっとした変化に気づいていきたいです。

<神経性やせ症の娘を支える母親の体験>

娘が拒食症になったのは、10年以上も前のことです。今と違って「摂食障害」という病気の情報が少なく、どう受け止め、どのように対処したらよいのかととまどうばかりでした。いったい誰に相談すれば良いのか?現在通院している病院にたどり着くまでは、不安で大変な日々でした。
大量に食品を購入し、過食・嘔吐をしている娘にとって、何度も消えかかった命を助けてくださった先生方が命綱でした。しかし治療を受けていても、毎日分からないことだらけでした。病院や医師との関わり方、治療に際して家族はどこまで入り込んでいったらよいのか、ただ見守る方がいいのか。
治療が進むにつれ、家族全員が一丸となって病気にぶつかっていかなければ前に進めないと思うようになりました。娘とは隠し事をせずに何でも話し合うよう心がけました。私は娘と向き合うことにしました。一方で、あえて私自身の時間を作って気分転換をすることで、娘と冷静に向き合うことができるようになりました。そして通院だけは休まず必ず行くことを娘と約束し、できる限り一緒に行くと決めて歩んできました。
摂食障害は拒食症や過食症など、深く難しい心の病気だと思います。一歩進んでは喜び、二歩後退しては落ち込みます。でも、いつかはトンネルを抜けられる日が来ると信じて、娘・病院・家族で協力しながら今日も戦っています。

(ここで紹介した例は、患者さんのご家族のお話をもとに、わかりやすくまとめなおしたものです)